東京地方裁判所 昭和62年(行ウ)108号 判決 1990年2月21日
原告
オリエンタルモーター株式会社
右代表者代表取締役
若林昭八郎
右訴訟代理人弁護士
中町誠
被告
中央労働委員会
右代表者会長
石川吉右衛門
右指定代理人
渡部吉隆
外二名
被告補助参加人
全日本金属情報機器労働組合東京地方本部オリエンタルモーター支部
右代表者執行委員長
大池良三
右訴訟代理人弁護士
高橋勲
同
藤野善夫
同
後藤裕造
主文
一 被告が中労委昭和五三年(不再)第四号事件につき昭和六二年五月二〇日付けでした別紙(二)記載の命令中、次の部分を取り消す。
1 主文第2ないし第4項
2 主文第5項中(2)、(3)、(5)につきポストノーティスを命じた部分
3 主文第5項(4)中昭和五一年春の賃上げ交渉中に全従業員に受領書を配付し賃金を受領する者に署名押印のうえ提出させたことにつきポストノーティスを命じた部分
4 右1ないし3に関する原告の再審査申立てを棄却した部分
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の、その余を被告の負担とし、参加によって生じた費用はこれを三分し、その一を原告の、その余を補助参加人の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が中労委昭和五三年(不再)第四号事件につき昭和六二年五月二〇日付けでした命令中、原告の再審査申立てを棄却した部分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 原告の主張
一 救済命令の成立
千葉県地方労働委員会は、被告補助参加人(旧名称は総評全国金属労働組合千葉地方本部オリエンタル支部。以下「補助参加人」という。)を申立人、原告を被申立人とする千労委昭和五〇年(不)第三号不当労働行為救済申立事件につき、昭和五三年一月一三日付けで別紙(一)記載のとおりの救済命令を発した。原告が右命令を不服として被告に対し再審査の申立てをしたところ、被告は、右申立てにかかる中労委昭和五三年(不再)第四号事件につき、同六二年五月二〇日付けをもって、別紙(二)記載のとおり原告の再審査申立ての一部を認容して補助参加人の救済申立ての一部を棄却し、原告のその余の再審査申立てを棄却する旨の命令(以下「本件命令」という。)を発し、この命令書の写しは同年八月六日原告に交付された。
二 しかしながら、本件命令には、以下のとおりの違法がある。
1 就業時間中の組合活動の範囲に関する団体交渉の拒否について
就業時間中の組合活動については、組合活動は本来就業時間外に行われるものであるとする原告の見解と、就業時間中の組合活動は本来認められるべきであるとの補助参加人の見解が対立している。労働者は、雇用契約に基づき職務専念義務を負っており、就業時間中の組合活動は違法とされるべきであるから、原告の右見解は正当である。原告と補助参加人の右対立はもはや見解の相違としかいいようがなく、このように見解の対立が明白でいわゆるデッドロック状態にある場合には団体交渉の拒否に正当理由があるというべきである。
また、本件命令は、秋闘要求等の団体交渉において就業時間中の社外組合活動について具体的な話合いが行われたとする疎明がないとしているが、昭和五〇年一一月一一日にこの点につき話合いが行われたことが証拠上明らかである。
2 人事異動に関する団体交渉の拒否について
本件命令は、原告が同五一年一一月一七日付け団体交渉申入書で団体交渉の議題として人事異動の件をわざわざ追加して原告側から団体交渉を申し入れたことを全く無視している。
次に、本件命令は、交渉事項が不明確であったとしても団体交渉においてその点を質し明確にすれば足りるとしているが、これは原告が同月二五日に行われた団体交渉の席上で補助参加人にこの点を質したのに対し、補助参加人が交渉事項を具体的に明確化することができなかったことを無視した立論である。
さらに、補助参加人は、交渉事項に非組合員の問題が当然含まれる旨明示しているが、一般に労働組合は、組合員の労働条件その他の待遇についてのみ団体交渉権を有し、非組合員のそれらについては団体交渉権を有しないのであるから、原告が当該団交申入れを拒否しても不当労働行為は成立しないものというべきである。
3 組合事務所の設置、貸与に関する団体交渉の拒否等について
原告は、別紙図面C記載の部分に位置する地下二階の倉庫の一部約三〇平方メートル(以下「C部分」という。)の貸与契約につき、同五〇年七月、間仕切り工事を完成させたうえ、原告作成の組合事務所貸与協定案を提示して補助参加人に記名調印を求めたところ、補助参加人は、それ以前の団体交渉において既に原告が建築基準法上の問題から拒否した事項(C部分の貸与は暫定的なものとして、別紙図面B記載の中庭のコンクリートに面した部分(以下「B部分」という。)に組合事務所を設置する。)やそれまで労使間に全く合意がない事項(オリエンタルサービス本社について書類等の保管スペースを設け貸与する。)を突如として付帯条件として持ち出したものである。したがって、C部分の貸与契約が成立しなかったのは、専ら補助参加人側の身勝手な付帯条件の固執による拒絶行為のせいであるから、本件命令が貸与契約の不成立を一方的な原告の翻意によるがごとき認定を行っているのは不当である。原告は、本来便宜供与であるから貸与する義務のない組合事務所の問題についても、補助参加人の結成直後から終始前向きに対応し、C部分について工事まで行い、その後C部分が部品庫として使用され組合事務所用としては使用が不可能となった後は、別紙図面A記載の部分(以下「A部分」という。)に組合事務所を設置することを提案する措置まで講じてきたが、補助参加人は、右代替案に対し難色を示し、結局補助参加人自身の自主的判断に基づく選択の結果、組合事務所貸与に関する合意をみなかったものであって、原告の対応が権利の濫用であると認められるような特段の事情はない。また、原告の態度が補助参加人のストライキを契機として変わったとの本件命令の認定も事実無根である。
次に、本件命令は、補助参加人が約一〇平方メートルのプレハブ建物をもって組合事務所とすることに実質的に同意した旨の疎明がないとしているが、同五二年七月二一日の団体交渉において右の点につき同意があったことは証拠上明らかである。
4 組合集会等のための食堂使用について
本件命令は、木村守衛に対する同五一年二月二三日の事件についての事実認定を誤っている。当時、原告の豊四季事業所食堂では就業時間後原告の承諾を得て社員の各種サークル活動、勉強会、課単位の打合せ等が行われており、守衛は、保安管理業務の一環として終業時間後他の職場はもちろん食堂についても巡回するとともに、残っている者の人数及び氏名を確認する業務を行っていた。同日も午後六時二〇分ころ、木村守衛が食堂を巡回し同所を組合集会のため使用中の者の人数及び氏名を確認していたところ、補助参加人の大池良三委員長及び金子政信書記長が、木村守衛に対し「会社の犬」等と暴言をはいて同人の職務を妨害し、氏名を記録した用紙を取り上げる等の行為に及んだものであって、このような補助参加人の行為は到底正当とはいえず、原告がこれに対し厳重な警告を行うことは当然である。そもそも、終業時間後の食堂使用について、守衛が巡回し居残った者の人数及び氏名を確認することは保安管理上必要最小限の業務行為であって、労働組合といえども企業施設を借りる以上、施設管理権を有する企業が保安管理の必要から行う一定の制約に服する義務がある。右施設管理権に基づく規律や制約に服さない者に対しては、企業秩序を乱すものとして、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができると解すべきであるから、原告が補助参加人に対し、前記守衛業務を否定するのであれば、原告の施設の使用は一切認めない旨通告することも、施設管理権者たる原告としては当然の正当な行為である。
次に、本件命令は、原告が、補助参加人において木村守衛の事件についての補助参加人の見解を維持するならば、原告の施設の使用は一切認めないとの態度で以後一貫して対処した旨の認定をしている。しかしながら、原告は、補助参加人宛同年三月一八日付け申込書で同書記載1ないし4の条件を補助参加人が今度誠実に守る旨を約束すれば、支障のない限り補助参加人の大会開催のための食堂使用を許可する旨申し出ており、右条件は施設管理権を有する企業としては極めて穏当かつ常識的な内容である。しかるに、補助参加人は、事前に届出さえすれば食堂を自由に使用できるとの独自の見解に立って原告の右申出を拒絶し、原告所定の会場使用許可願の書式を勝手に会場使用届と改めて同年二月二七日以降数回にわたり原告の許可なく食堂を勝手に使用しているものである。このような原告の一定の譲歩案を示した柔軟で正当な対応に比し、補助参加人の硬直した見解に基づく不当かつ違法な一連の食堂の無断使用行為の数々を総合勘案すれば、本件の食堂使用に関する原告の措置が権利の濫用であると認められるような特段の事情があるということはできない。
5 組合加入状況の調査について
本件命令は、補助参加人にその組織率を尋ねれば足りるかのごとき判断をしているが、原告は、団体交渉の席において補助参加人に対し組合員数及び組織率について、しばしば質問したにもかかわらず補助参加人は一切これを明らかにしなかったものである。
さらに、本件命令は、本調査が記名式であることを非難するが、右調査のための回答書の提出及び同票に記名をするか否かは従業員の自主的判断に委ねられていたのであるから、右非難は失当である。
6 新入社員教育における組合誹謗について
そもそも原告が、堀越昌章に対し、本件命令が認定したような内容の講義を依頼した事実はない。堀越昌章と原告との関係は、総務関係の相談や社員教育等の講演に対し顧問料を支払うという委任契約関係であって、堀越昌章が会社に常駐することはなく、会社に同人の部屋があるわけでもない。したがって、堀越昌章は会社外の第三者にすぎないから、同人の行為は原告との通謀や指示がある場合にのみ原告の行為とみなされるべきであると解すべきところ、本件命令は、原告の指示や通謀がないにもかかわらず、堀越昌章が原告の顧問の地位にあることから直ちに堀越昌章の行為を原告に帰責させている点において誤っている。
7 一時金の念書及び受領書の配布について
本件命令は、本件一時金等を支給するにつき非組合員と組合員とを区別すべき合理的理由がないとしているが、本件のように原告と補助参加人との交渉が継続中でいまだ妥結に至らない時に、直接組合員に対し原告回答額の金員を支給することは、組合の団体交渉権を無視した不当労働行為と非難されることが確実であるから、これを回避する目的で非組合員と組合員とを区別することには合理的理由がある。
さらに、本件命令は、受領の事実を証するためには、本件念書又は受領書の配布以外に方法がないわけではないというが、それ以外の方法とは何を指すか不明である。
8 組合脱退工作について
原告は、川合取締役の本件行為を全く了知しておらず、仮に本件命令が認定したような事実があったとしても、それはあくまで川合取締役の個人的行為であるから不当労働行為にはならない。
三 本件命令書の理由中「第1 当委員会の認定した事実」に対する認否は、以下のとおりである。
1 「1 当事者」について
(一) (1)の事実のうち、原告の資本金額及び株式会社オリエンタルサービスの業務内容は否認し、その余の事実は認める。原告の資本金額は昭和六二年九月現在一〇億円であり、株式会社オリエンタルサービスは同六一年六月以降サービス部門の業務のみを扱っている。
(二) (2)の事実のうち、補助参加人が存在することは認め、その余の事実は知らない。
2 「2 組合の公然化から昭和五〇年七月三日のストライキまでの経過」について
(一) (1)の事実のうち、補助参加人が昭和五〇年五月一三日、原告に組合を結成したことを通知するとともに、一三項目についての要求書を提出したことは認め、その余の事実は知らない。
(二) (3)の事実のうち、ストライキに参加した組合員数は知らない。部課長ら職制が、組合員が就労中の非組合員に対しストライキに協力するよう説得することを阻止したとの点、会社が組合に出した文書が警告書であるとの点及び会社が組合宛に平和条項又は争議条項があることを前提とするかのごとき要求を行ったとの点はいずれも否認する。その余の事実は認める。
3 「3 就業時間中の組合活動の範囲に関する団体交渉」について
(一) (1)ないし(4)の各事実は認める。
(二) (5)の事実のうち、原告が団体交渉に応じなかったとの点は否認し、その余の事実は認める。補助参加人の交渉事項の趣旨が不明確であったので、議題の整理と明確な具体案の提出を求めたが、補助参加人がこれに応ぜず団体交渉に至らなかったものである。
(三) (6)の事実のうち、原告が団体交渉に応じなかったとの点は否認し、その余の事実は認める。
(四) (7)の事実のうち、原告が団体交渉に応じなかったとの点は否認し、その余の事実は認める。補助参加人の要求事項が多岐にわたり検討に相当期間を要するため、団交日の順延を要請したのであって、団体交渉を拒否したものではない。
(五) (8)ないし(12)の各事実は認める。
(六) (13)の事実のうち、原告が団体交渉に応じなかったとの点は否認し、その余の事実は認める。原告は、補助参加人の求める交渉事項のうち組合事務所の件について検討中のため、検討終了まで団体交渉の開催の延期を求めたに過ぎない。
4 「4 人事異動に関する団体交渉」について
(一) (1)の事実のうち、原告が要求事項②について原則として事前に協議することを了解し、右事項中の「労働条件」の文言の内容について今後双方が具体的に検討のうえ話合いで決めることになったとの点は否認し、その余の事実は認める。原告は、「労働条件」の文言が補助参加人のいう「労働者が働くためのすべての条件」という意味ならば不明確で理解できないと主張したものである。
(二) (2)及び(3)の各事実は認める。
(三) (4)の事実のうち、原告が補助参加人の昭和五一年八月一七日付け及び同月二五日付け各団体交渉の申入れに応じなかったとの点は否認し、その余の事実は認める。原告は交渉事項の趣旨を明確にするよう補助参加人に求めたに過ぎない。
(四) (5)及び(6)の各事実は認める。
(五) (7)の事実のうち、原告が九月一七日に同月六日付けの回答書と同趣旨の回答を行ったことは認め、その余の事実は否認する。
(六) (8)及び(9)の各事実は認める。
5 「5 組合事務所設置・貸与に関する団体交渉」について
(一) (1)の事実のうち、原告が組合事務所及び掲示板の設置について基本的に了解したとの点は否認し、その余の事実は認める。原告は、具体的な場所、広さ、管理責任の所在、貸与期間等について労使が合意を見れば貸与しようと述べたに過ぎない。
(二) (2)の事実のうち、原告が松林の中に一〇平方メートル以上の建物を建築することが建築基準法上できるかどうか調査すること及び第二事務棟地下二階の倉庫内の場所は右調査結果がわかるまで、とりあえず用意するものである旨提案したことは否認し、その余の事実は認める。
(三) (3)の事実のうち、原告が、組合事務所の設置場所として補助参加人が希望する中庭のコンクリートに面した場所につき、実際にやってみなければわからないので確約できないと答えたこと、営繕の向かい側の倉庫の一部の貸与が暫定的なものであること、組合事務所貸与協定案がほぼ合意に達したことは否認し、その余の事実は認める。原告は補助参加人の希望については建築基準法上の問題等があるので拒否している。組合事務所貸与協定については、貸与協定の最重要項目ともいえる貸与期間等について、結局物別れに終わっているのであるから、ほぼ合意に達したというような状態ではない。
(四) (4)の事実のうち、原告が貸与すると確答したことは否認し、その余の事実は認める。原告は、あくまで原告作成の組合事務所貸与協定案に同意することを条件に、貸与の申出をしたものである。
(五) (5)の事実は認める。
(六) (6)の事実のうち、覚書が本事務所の場所を会社が当初提案した松林の中としていたこと及び原告が組合事務所貸与協定書の締結を拒否したのが、原告の調査の結果松林の中に一〇平方メートル以上の建物を建築することが建築基準法上認められないことが明らかとなったためであることは否認し、その余の事実は認める。覚書では、当初から組合が要求していた中庭に面した林の中を指定している。右覚書には、労使間で全く合意のない、オリエンタルサービスについては書類の保管スペースを設け貸与するとの記載もあり、原告は、労使間で全く合意のない覚書を条件として組合事務所を貸与することはできないとして、覚書のある協定書の締結を断ったものである。
(七) (7)の事実は認める。
(八) (8)の事実のうち、原告が組合事務所を貸すのであれば貸す相手の組織機構及び権限の範囲を知りたいと主張したことは否認し、その余の事実は認める。
(九) (9)の事実のうち、金子書記長が覚書を撤回して、第二事務棟地下二階の営繕の向い側の倉庫の一部を組合事務所として借りてもよい旨伝えたことは否認し、その余の事実は認める。
(一〇) (10)の事実は認める。
(一一) (11)の事実は認める。里吉課長は、補助参加人の申入れに対し、スペースも不足して来たし、いまさら無理だろうと答えている。
(一二) (12)の事実中、原告が団体交渉に応じなかったとの点は否認し、その余の事実は認める。原告は、要求事項の検討を終了するまで団体交渉の開催の延期を求めていたに過ぎない。
(一三) (13)ないし(16)の各事実は認める。
(一四) (17)の事実は認める。原告が団体交渉の申入れに応じなかったのは、既に十二分な検討を加えた最終回答を行っていたうえ、さらに二回にわたる団体交渉において本議題につき労使が全く平行線のまま終わっていたため、これ以上交渉しても無意味だと考えたためである。
(一五) (19)の事実は認める。
6 「7 組合集会等の食堂使用」について
(一) (1)の事実のうち、木村守衛が原告の業務命令を受けて参加者の氏名を記録したこと、木村守衛が当該記録用紙を大池委員長に手渡したこと、それまでは守衛は食堂を利用した組合集会について遠くから人数を確認するだけであったことは否認し、その余の事実は認める。原告は、従来から退社時間後残業あるいはクラブ活動のため会社構内に残留している者の氏名、所属部課等を社内巡回する守衛がチェックする制度をとっており、本件も右の趣旨で氏名等をチェックしていたにすぎない。大池らは木村守衛に対し、会社の犬等と暴言脅迫を行って同人の意思に反して強引に記録用紙を取り上げたものである。
(二) (2)の事実のうち、三月三日の分会大会が不成立に終わったことは知らず、その余の事実は認める。
(三) (3)の事実のうち、原告が団体交渉に応じなかったことは否認し、その余の事実は認める。原告は、要求事項の検討を終了するまで団体交渉の延期を求めたに過ぎない。
(四) (4)の事実は認める。
(五) (5)の事実のうち、会社の回答日が四月四日であることは否認し、その余の事実は認める。回答日は四月五日である。
(六) (6)ないし(8)の各事実は認める。
7 「8 組合加入状況の調査」について
(一) (1)の事実のうち、イ、ロは認める。ハのうち、補助参加人が昭和五〇年九月一八日、原告に三六協定の締結を申し込んだことは認め、その余は知らない。ニのうち、原告と補助参加人が三六協定締結につき団体交渉を行ったが、原告は補助参加人が従業員の過半数を組織しているか否か不明であるとして三六協定の締結を拒否したことは否認し、その余の事実は認める。ホ、ヘは認める。トのうち、補助参加人が抗議のビラを配布したことは知らず、その余は認める。
(二) (2)の事実のうち、イは、昭和五〇年一一月二一日に認定のような署名用紙が従業員に配られたことは知らず、その余は認める。ロ、ハは認める。
8 「11 新入社員教育における組合誹謗」について
(一) (1)の事実のうち、原告が堀越昌章を非常勤の顧問として迎えた年月日は否認し、その余の事実は認める。同人との顧問関係は、昭和四九年末からあった。
(二) (2)の事実のうち、講義録の大部分が組合問題に言及しているとの点は否認し、その余の事実は認める。原告が堀越昌章に組合問題の講演を依頼した事実はなく、同人が当日組合問題に触れたのは、新入社員の一人がたまたま組合問題について質問したため、これに答えたものにすぎない。
9 「12 一時金の念書及び受領書配布」について
(一) (1)の事実のうち、原告が団体交渉に応じなかったとの点は否認し、その余の事実は認める。原告は、要求事項の検討が終了するまで団体交渉の延期を求めたに過ぎず、組合規約、組合員名簿の未提出を理由に団体交渉を拒否したものではない。
(二) (2)の事実のうち、原告が平均2.56か月分を支給する旨の文書回答をしたことは否認し、その余の事実は認める。同文書では、配分月表に基づく支給月数の回答を行っている。
(三) (3)の事実は認める。
(四) (4)の事実のうち、補助参加人が原告の回答を受入れる旨の通告をしたことは否認し、その余の事実は認める。補助参加人は、原告の回答のうち年末一時金の金額及び秋闘要求の棚上げについてのみ執行委員会段階で了解すると回答したに過ぎない。また、原告は、既に一一月二一日から三六協定の締結との一括妥結を提案しており、一二月五日に新たにこのことを主張したものではない。
(五) (5)及び(6)の各事実は認める。
(六) (7)の事実のうち、念書に署名しなかった者の中に組合員がいたかどうかは知らず、その余の事実は認める。
(七) (8)の事実のうち、原告が団体交渉を行えない旨回答したことは否認し、その余の事実は認める。原告は、要求事項の検討が終了するまで団体交渉の開催の延期を求めたに過ぎない。
(八) (9)ないし(11)の各事実は認める。
10 「13 組合脱退工作」について
(一) (1)の事実は知らない。
(二) (2)は認める。
四 よって、原告は、本件命令の取消しを求める。
第二 原告の主張に対する認否及び被告の主張
一 原告の主張1の事実は認める。
二 同2の主張は争う。
三 本件命令は、本件命令書の理由欄記載のとおりの事実に基づいてされたもので、その事実認定及び判断に違法はない。
第三 補助参加人の主張
一 就業時間中の組合活動の範囲に関する団体交渉の拒否について
就業時間中の社内の組合活動の範囲については、原告と補助参加人との間で最小限のものについては原告もこれを認め、その内容について今後の労使間の交渉事項とすることが確認されたが、社外における組合活動については、要求事項に具体的に挙げられておらず、団体交渉でも議題にもならず具体的に検討されたこともない状態であった。しかるに、原告は、突然昭和五〇年八月八日に補助参加人に対し、就業時間中の組合活動の範囲についてと題する文書を示し、以後は同文書に記載された見解を繰り返し、組合規約の提出を団体交渉の前提条件として主張し、未提出の間は一切団体交渉に応じないとの姿勢を変えず、この点について誠実に団体交渉を行わなかった。原告は、同年一一月一一日にこの点につき話合いが行われたと主張するが、ここでも原告は誠意ある対応をせず前記見解を繰り返していたにすぎない。団体交渉に誠意をもって応じたうえでのいわゆるデッドロック状態であるならともかく、原告の対応は、それ以前に誠意ある交渉すら行ってきていないのであって、デッドロックを主張できるような状態ではない。
二 人事異動に関する団体交渉の拒否について
原告は、この点につき、当初から人事異動は原告の権限として行われるものであり、人事異動に関する約款を締結する意思はないこと等の見解を示し、以後同見解を繰り返したにすぎず、誠意ある団体交渉を行ったとはいえない。また、補助参加人が同五一年八月時点で降格処分があると指摘した人事異動の対象者は、当時補助参加人に所属していた者であるから、補助参加人が団体交渉権を有しない者について団体交渉の申入れを行っていたということはできない。
三 組合事務所の設置、貸与に関する団体交渉の拒否について
原告は、B部分に組合事務所を設置することには建築基準法上の問題があると主張するが、補助参加人の調査によれば右主張は根拠がないことが明らかである。C部分に設置した事務所を暫定的なものとした補助参加人作成の覚書は、組合事務所貸与問題の合意を正確に表現したものである。また、原告は、補助参加人がオリエンタルサービス本社についての書類等の保管スペースを設け貸与するということを突如として付帯条件として持ち出したと主張するが、この点について原告は第一回団体交渉において拒否することなく了解していたもので、突如として持ち出したものではない。
さらに、原告は、補助参加人が約一〇平方メートルのプレハブ建物をもって組合事務所とすることに実質的に同意した旨主張するが、補助参加人は、一〇平方メートルのスペースでは組合会議を行うには狭すぎるので、食堂を組合備品の暫定的置場とし、補助参加人が使用許可願を出せば原告が使用しない限り食堂を貸与するとの条件付きで同意したに過ぎず、原告が右条件を承諾しなかったので合意に達しなかったものである。
四 組合集会等のための食堂使用について
原告は、大池らが木村守衛に対し会社の犬等と暴言をはいたと述べているが、事実に反する。原告は、従来は窓の戸締りの点検、クラブ活動や会議参加者の人数確認程度しか行っていなかったにもかかわらず、昭和五一年二月二三日の春闘学習会の際は、木村守衛が学習会参加者のそばまで近寄ってきて氏名を書く素振りをしたので、大池委員長が「氏名のチェックはやめてほしい。会社に言われてこのようなことをやっているんだろうから、会社に対して組合が抗議するから、この場は引き取ってくれ」と穏やかに話したに過ぎない。
次に、原告は、同年三月一八日付け申入書で食堂使用許可条件を示したが、補助参加人がこれを一蹴した旨主張する。しかしながら、原告は、同年四月一三日付けで千葉地方労働委員会から「組合が組合会議または職場大会もしくは分会大会等のため会場使用許可願を提出して食堂の使用を申し入れた時は、会社が使用する場合を除きこれを拒否しないこと」という勧告を受けたにもかかわらず、正当な理由なく受諾を拒否し、その後は前記申入書を盾に誠実な団体交渉に応ぜず、さらに、同労働委員会の和解勧告に基づく団体交渉でも組合事務所問題が解決した後の問題であるとの主張を譲らなかったものである。
五 組合加入状況の調査について
この点についても、被告が認定したとおりであり、回答書の提出が従業員の自主的判断に委ねられたことや、無記名による提出が相当数あったというようなことはない。
六 新入社員教育における組合誹謗について
堀越昌章の講義録は、従業員の勉強会や新入社員の研修会等で使用されたものであり、明らかに原告が従業員に反組合的な意識を植えつけるために堀越昌章を利用したものである。また、同人は、非常勤といえども、総務関係の相談に応じる顧問であり、原告の意思決定に影響を与える地位にいる役職者であるから、支配人、支店長、工場長のような上級職制に準ずる立場の者というべきであって、反証のない限り堀越昌章の行為は会社に帰責されると解すべきところ、この点についての反証はない。
七 一時金の念書及び受領書の配布について
本件においては、同五〇年一二月五日補助参加人が、一時金についての原告回答を受け入れる旨の通告をしたことにより、その支給問題は、既に実質的には妥結していた。ところが、原告が、補助参加人が三六協定の締結に応じなければ年末一時金を支給しない旨の差違え条件を主張して妥結を延ばし、組合員に対して慣行支給日以降も支給を繰延べしようとしていた状況であった。したがって、一時金を組合員に対し非組合員と同様に支給しても、決して団体交渉権を無視した不当労働行為と非難されるようなことはなかったものである。
八 組合脱退工作について
原告による組合脱退工作は、組織的に行われており、桜井の結婚仲人に関する川合取締役の行為はその一環として行われたものであるから、同人の個人的行為ではないことは明らかである。川合は取締役という原告の重役であるから、桜井の脱退のための工作が原告と切り離された個人的なものとは到底いえない。
第四 証拠<省略>
理由
一原告の主張一(救済命令の成立)の事実は当事者間に争いがない。
二当事者
原告が、精密小型モーターの製造、販売を業とする株式会社であって、肩書地に本社及び豊四季事業所を、茨城県土浦市、香川県高松市及び山形県鶴岡市に各事業所を有することは、当事者間に争いがない。
<証拠>によれば、補助参加人は、原告及び当時その子会社であったオリエンタルサービス株式会社の従業員らにより昭和四九年一二月二二日に結成された労働組合であることが認められる。
三不当労働行為の成否
1 就業時間中の組合活動の範囲に関する団体交渉の拒否について
(一) 事実関係
当事者間に争いのない事実と、<証拠>を総合すれば、次の事実を認めることができる。
(1) 補助参加人は、結成後非公然に活動していたが、昭和五〇年五月一二日公然化大会を開き、翌一三日原告に対して組合結成を通知するとともに、一三項目にのぼる要求書を提出した。原告と補助参加人は、同五〇年五月一五日第一回団体交渉を開いたが、同交渉において就業時間中の組合活動の範囲につき協議し、電話の取次、面会等については執行委員を対象範囲とすること、面会者の入退場は原告の規則に従うこと及び就業時間中の組合活動については連絡等必要最小限とし、緊急を要する時のみとすることを合意した。その後、原告と補助参加人との間で右「必要最小限」の文言の解釈をめぐって争いが生じ、同年六月一〇日の団体交渉において、右文言の解釈につき原告及び補助参加人双方の認識に差異があるので、内容を明確にして双方一致了解する必要があることが確認された。
(2) ところが、原告は、同年八月八日、補助参加人に対し、同日付け文書で就業時間中の組合活動の範囲について今まで不明確だった取扱いを明確にするとして、外出等会社外の組合活動は認められないので賃金カットをするとの見解を示し、同月一一日以降は右見解に従った取扱いを実施することを通知し、同年九月八日、補助参加人の役員四名が就業時間中に会社外で組合活動をしたとして賃金カットをするとともに、欠勤・遅刻の扱いとした。補助参加人は、同月九日、原告に対し社外組合活動賃金カットの件を議題として団体交渉を申し入れたが、原告は翌一〇日交渉事項の趣旨が不明確であるから具体案を提出してほしいと文書で回答したにとどまり、団体交渉に応じなかった。そこで、補助参加人は、同月一六日、原告に対し再度同議題について団体交渉を申し入れるとともに、会社外における組合活動について賃金カットをされることは止むを得ないとしても、欠勤又は遅刻扱いをすることは不当であり、この件につき団体交渉によって解決することを要求し、原告の一方的な決めつけに断固抗議する旨の抗議書を提出したが、原告は、同月三〇日、就業時間中の組合活動は原則として認めない旨文書で回答し、団体交渉に応じなかった。補助参加人は、同年一〇月六日、原告に対する秋闘要求書中で「組合員が組合業務のため欠勤、早退、遅刻、外出などする場合はこれを通常出勤扱いとせよ」との要求事項を掲げ、原告に団体交渉を申し入れたが、原告は要求事項について検討中なので同年一一月二〇日までに他の要求事項と一括して回答すると通知して団体交渉を開催しなかった。その後、千葉県地方労働委員会(以下「千葉地労委」という。)の勧告に基づき、同月一一日に原告と補助参加人との間で団体交渉が開かれたが、同交渉において原告は、就業時間中の組合活動については右八月八日付け文書のとおり取り扱う旨主張し、同年一一月二〇日にも補助参加人の前記秋闘要求書に対する回答書中で、就業時間中の組合活動の件については前記八月八日付け文書等により回答ずみであると主張した。
(3) 原告と補助参加人は、同年一一月から一二月にかけて秋闘要求及び年末一時金について団体交渉を行った際、補助参加人が就業時間中の組合活動についての原告の回答を受け取ったことを認めるという意味で、「会社が回答ずみであることを組合は了解する。」旨の文言を年末一時金について作成した同月一八日付け協定書に記載した。ところが、補助参加人が同五一年三月九日、就業時間中の組合活動の件を議題として原告に団体交渉を申し入れたところ、原告は、同月一一日付け文書で、就業時間中の組合活動の件については、前記同五〇年九月三〇日付け文書で回答ずみであり、補助参加人も同年一二月一八日に締結した協定書でこの件につき原告が回答ずみであることを了解している等と回答し、団体交渉に応じなかった。原告は、同五一年五月一一日に行われた団体交渉においても、就業時間中の組合活動については、前同様の主張を繰り返した。
<証拠>中、右認定に反する部分は、前掲各証拠に照らし採用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
(二) 不当労働行為の成否
前認定によれば、就業時間中の組合活動の範囲についての同五〇年五月一五日付け合意の時点では、組合活動の許される「必要最小限」の内容について原告、補助参加人双方の認識が一致せず、双方とも会社外における組合活動の問題について意識しないまま、この件について具体的な話合いは行われていなかったというべきであるところ、原告は、同年八月八日に補助参加人となんらの協議もしないで、文書で会社外での組合活動は認められないとの見解を示し、この問題についての補助参加人の団体交渉申入れに対し、右文書等で回答ずみであるとして応じようとしなかった。そして、千葉地労委の勧告を受け、同年一一月一一日に漸く団体交渉を開いたが、その後一時金等の問題で開催された団体交渉により作成された同年一二月一八日付け協定書に「会社が回答ずみであることを組合は了解する。」との文言が記載されたことを盾に取り、団体交渉の要求に応じないで再び文書で回答するにとどめ、同五一年五月になって開かれた団体交渉においても、右協定書によりこの問題は解決ずみであると主張しているものである。このような原告の対応は、団体交渉を開いてはいるものの補助参加人との実質的な協議を行っていないものといわざるを得ず、誠意をもって団体交渉に応ずべき義務を尽くしたものということはできないから、正当な理由のない団体交渉拒否(労働組合法七条二号)に該当するというべきである。原告は、就業時間中の組合活動の範囲については原告と補助参加人の見解の対立が明白で、いわゆるデッドロック状態にあるから団体交渉拒否に正当理由があると主張するが、原告がこの件について協議を尽くしていないことは右説示のとおりであり、協議を尽くした結果双方の主張が対立し膠着状態にあるというわけではないから、原告の右主張は採用することができない。
したがって、本件命令が原告に対し、補助参加人の会社外組合活動の件を交渉事項とする団体交渉の申入れに誠意をもって応じるよう命じたのは正当である。
2 人事異動に関する団体交渉の拒否について
(一) 事実関係
当事者間に争いのない事実と、<証拠>を総合すれば、次の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。
(1) 原告と補助参加人は、昭和五〇年五月一五日の第一回団体交渉において、補助参加人の要求中、①労働条件の改訂、新規実施については組合と事前に話合いを行い、一方的に行わないこと、②労働者の労働条件に大きな影響のある問題は事前に組合と話し合い、組合と本人の了解なく一方的に行わないこと、③労働条件の改悪及び生活の圧迫につながる出向、配転、転勤を一方的に行わないこと、との三点について協議し、原告は、①について事前に協議することは了解するが、「労働条件」の内容が不明確であり、②、③についても同様に字句が不明確であると主張したので、双方で内容につき具体的に協議して決定してゆくことを合意した。補助参加人は、同月下旬、右合意に基づき①ないし③の要求を修正し、「労働条件の改訂、新規実施及び出向、転勤、転籍等労働者に関する事項は組合と事前に話し合い、組合と本人の了解なく一方的に行わないこと。」との要求を改めて原告に提示した。さらに、補助参加人は、同年一〇月六日、会社に対し、すべての労働条件の改定、新規実施を補助参加人と協議決定のうえ行うよう要求したが、原告は同年一一月二〇日、右要求にかかる協議約款及び同意約款(以下「人事に関する約款」という。)を締結する意思はない旨回答した。右要求は、同年一二月一八日に年末一時金について妥結した際、一時棚上げとすることが合意された。
(2) 原告は、同五一年八月一六日、補助参加人に対し、同月一日付けで三一名の人事異動を実施することを通知した。補助参加人は、翌一七日、原告に対し、人事異動の件を議題として団体交渉を申し入れたが、原告は、議題の趣旨が不明確であり、人事異動については右通知のとおりであって補助参加人と人事に関する約款を締結する意思は全くないと文書で回答して団体交渉に応じなかった。補助参加人は、同月二三日にも原告に対し八月一日付けの人事異動の件を議題として団体交渉を申し入れたが、原告はこれに応じなかった。そこで、補助参加人は、同月三〇日、原告が組合を無視して個人交渉を行い、労働条件の変更を一方的に行ったこと、補助参加人の人事異動に関する右団体交渉申入れを拒否したこと等につき原告に抗議したところ、原告は、同年九月六日、人事異動は会社の責任と権限において実施するものであること、補助参加人と人事に関する約款を締結する意思は全くないこと、補助参加人の団体交渉の申入れは人事異動の件とあるのみで趣旨具体案を明示しておらず、右申入れに対しては既に回答ずみであって団体交渉拒否はないこと等を文書で回答した。これに対し補助参加人は、同月一三日原告に対し、右回答は労働者と労働組合の意思を無視するものであり、直ちに誠意をもって団体交渉を開催すべきだと申し入れたが、原告は、同月一七日、文書で前記同月六日付け文書と同趣旨の回答をした。補助参加人は、同年一〇月二二日、原告に対し、雇用の安定と権利を保障する協定書案を添付して転勤、配転等の労働条件の変更につき人事に関する約款を締結するよう要求した。
(3) 原告は、同年一一月一七日人事異動の件等につき補助参加人に対して団体交渉を申し入れ、原告と補助参加人は、同月二五日、団体交渉を行ったが、原告は、人事に関する約款を締結する意思がないことは既に文書で回答したとおりである、個別的な人事異動を問題とするのであれば誰が組合員かわからないので組合員名簿を提出してほしいと主張した。これに対し、補助参加人は、原告が人事に関する約款を結ばないと回答していることは問題である、人事の問題は労働条件の変更であるから従業員全体の問題であり組合員が誰であるかは関係がないと主張し、結局双方の主張が対立したまま交渉は終了した。
(二) 不当労働行為の成否
前認定によれば、補助参加人は、第一回団体交渉当時から、人事異動を含む労働条件の変更につき事前に補助参加人と協議するよう原告に要求し、労働条件の改定、新規実施につき協議約款又は同意約款の締結を求めていたのであり、補助参加人の同五一年八月の各団体交渉申入れにも、同月一日付けの人事異動を契機として、原告に対し、一時棚上げにされていた人事に関する約款を締結することを求める趣旨が含まれていたものというべきである。原告も右申入れに対する回答書中に自ら人事に関する約款に言及していることからみて、このことを十分認識していたものと推認できる。しかるに、原告は、文書で人事に関する約款を締結する意思はないと回答するのみで、この点に関する協議を実施せず、同年一一月の団体交渉においても人事に関する約款を締結する意思のないことは既に回答したとおりであるとして、実質的な協議をしていないのであるから、誠意をもって団体交渉に応じていないものといわなければならない。原告は、補助参加人の申し入れた団体交渉の趣旨が不明確であったと主張し、確かに前認定の事実に照らすと、明確を欠く点がなかったわけではないが、原告自身回答することができたところからも明らかなように、団体交渉に応じないことを正当化するほど不明確ではなかったものといわざるを得ないから、右主張は採用することができない。
したがって、このような原告の対応は正当な理由のない団体交渉拒否(労働組合法七条二号)に該当するものといわざるを得ず、本件命令が、補助参加人の同五一年八月一日付け人事異動に関する団体交渉を拒否したことにつき原告にポストノーティスを命じたのは、結論において正当である。
3 組合事務所の設置、貸与に関する団体交渉の拒否について
(一) 事実関係
当事者間に争いのない事実に、<証拠>を総合すれば、次の事実を認めることができる。
(1) 原告と補助参加人は、昭和五〇年五月一五日、組合事務所等の貸与について団体交渉を行い、原告は組合事務所を豊四季、土浦の各事業所に設置することを基本的に了解し、具体的な設置場所を後日回答することになった。なお、右交渉の際、補助参加人からオリエンタルサービスに書類等の保管スペースを設けてほしいとの要望が出された。同年五月一九日の団体交渉においても、原告が組合事務所の設置について了解するとの確認をするとともに、組合事務所貸与協定の内容及び設置場所について検討することを合意した。
(2) 原告は、同年五月二八日の団体交渉において、補助参加人に対し組合事務所等使用貸借協定書及び組合事務所の設置場所を提示した。補助参加人は、同年六月五日の団体交渉において、豊四季事業所の松林の中のA部分に一〇平方メートルの面積の組合事務所を設置するとの原告案に対し、一〇平方メートルでは狭いので広くしてほしい、A部分では目立たないのでもっと目立つ場所に設置してほしいとの希望を出したが、原告は、松林の中に一〇平方メートル以上の面積の建物を建築することは建築基準法上問題があるので調査することとし、とりあえず暫定的に第二事務棟地下二階のC部分に約三〇平方メートルの広さの組合事務所を設置する旨提案した。補助参加人は、食堂に組合事務所を設置することを提案したところ、原告がこれを拒絶したため、さらに、松林の中の中庭に面したB部分ほか二か所を設置場所として提案したが、当日は結論が出なかった。
(3) 補助参加人は、同月一〇日の団体交渉において、豊四季事業所の組合事務所としてB部分に独立棟を設置すること、独立棟が設置されるまでの間暫定的にC部分を組合事務所として使用することを提案した。これに対し、原告は、B部分に組合事務所を設置することには同意しなかったが、暫定的に使用するC部分については電気工事等を実施して一週間から一〇日くらいで組合事務所として使用できるようにしたいと答えた。原告は、同月下旬ころ、補助参加人に対し、C部分の貸与につき組合事務所貸与協定書を提示して記名調印を求め、同五〇年七月二日ころC部分につき組合事務所として使用するための間仕切り等の工事を完了した。
(4) そのころ、補助参加人は、同年の夏期一時金等について原告に対して要求をしていたが、これに対する原告の回答を不満として、同月三日原告に通告のうえ午後二時から五時一五分まで統一時限ストライキを実施した。原告は、同日補助参加人にストライキを遺憾としてその撤回を求めたが、補助参加人は、原告が組合執行部を通さず直接組合員に業務命令を発し、ストライキ不参加を呼びかけているとして原告に抗議するということがあった。
(5) 同月上旬、補助参加人は、前記(3)の組合事務所貸与協定書に記名調印して原告に渡すとともに、右協定書に①調印した協定書中のC部分の貸与は暫定的なものとし、豊四季事業所の本組合事務所はB部分に設置すること、②オリエンタルサービスに書類等の保管スペースを設け貸与すること等を内容とする覚書を添付した。これに対し原告は、労使間に合意のない事項を内容とする覚書の添付された協定書の締結には応じられないと回答した。
(6) 原告は、同年九月九日、従業員に対し「社員の皆様へ」という文書で、原告は組合事務所を組合本部の所在地である豊四季第二事務棟に用意して専用直通電話も架設してあり、貸与協定書に調印後貸与することになっていること、補助参加人に対し再三にわたり組合規定の提出を要求しているにもかかわらず補助参加人がこれを拒否しており、本来このような組合とは交渉するわけにはいかないが、組合規約の提出されることを期待して補助参加人との交渉を続け今日に至っていること等を通知した。
(7) 原告と補助参加人は、同年一一月一一日の団体交渉において組合事務所設置の問題について協議した。原告は、組合事務所の貸与は便宜供与であって組合が権利として要求すべきことではない、相互の信頼関係のもとに話合いをするためには、組合規約及び組合員名簿の提出が前提であると主張したが、補助参加人は組合員名簿の提出義務はない、組合規約を出さないとはいわないが、現在の状況では出せないと主張して合意に至らなかった。補助参加人は、同年一二月二五日、原告に対し組合事務所の件について団体交渉を申し入れたが、原告は業務繁忙を理由に年が明けてからの開催を希望した。
(8) 補助参加人は、同五一年二月末ころ、原告との事務折衝の中で、前記(5)の覚書を撤回してC部分を組合事務所として借りたいと申し入れ、さらに、同年三月九日、原告に対し組合事務所設置の件等について団体交渉を申し入れたところ、原告は、同月一一日、検討中であるから検討終了後回答するとし、豊四季事業所のC部分は既に部品、製品の保管場所として使用しており組合事務所として使用不可能だったことから、同月一八日、補助参加人に対し文書で、組合事務所使用貸借協定書を添付のうえ、豊四季事業所の組合事務所をA部分に設置することを提案する旨を通知した。これに対し補助参加人は、同月二九日、組合事務所の設置場所は労使間の合意で設置したC部分であることを確認し貸与協定を締結すべきである、面積は原告が提案している一〇平方メートルでは狭すぎる等と回答した。原告は、同年四月五日、C部分は原告が製品、部品等の倉庫として使用する必要性があるため使用できないので、今回A部分を設置場所として提案したものであること、補助参加人が右原告案に同意すれば組合事務所を貸与するつもりであることを文書で通知した。原告及び補助参加人は、同月八日及び一三日に組合事務所貸与問題について団体交渉を行ったが、双方とも従前の主張を繰り返すのみで合意に至らなかった。補助参加人は、同年八月二三日、組合事務所設置の件について団体交渉を申し入れたが、原告はこれに応じなかった。
(9) 原告と補助参加人は、千葉地労委の勧告に基づき、同五二年七月五日から同月二七日までの間六回にわたり団体交渉を行った。右各団体交渉において、補助参加人は、豊四季事業所の組合事務所をC部分に設置せよとの要求は撤回する、設置場所は中庭松林の中央寄りとし面積は一〇平方メートルでは狭いので広くしてほしい、原告が一〇平方メートル以上の面積の事務所の設置をあくまで拒否するのであれば一〇平方メートルの面積で借りてもよいが、その場合には後記4(3)の千葉地労委の勧告に従って組合事務所の問題が解決するまで暫定的に補助参加人に食堂の使用を認めることが条件であると主張した。これに対し原告は、組合事務所については前記(8)の同五一年三月一八日の回答のとおりであり、建築基準法上一〇平方メートル以上の面積の事務所を建築することはできない、組合事務所貸与協定書に調印する前に補助参加人主張のとおり食堂の使用を認めることは食堂が実質的に組合事務所化するおそれがあるため認められず、組合事務所の貸与の問題が先決である等と主張し、合意に至らなかった。
<証拠>中右認定に反する部分は前掲各証拠に照らし採用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
(二) 不当労働行為の成否
使用者による組合事務所の貸与は、便宜供与の一種であって、使用者は原則として組合に対して組合事務所を貸与する義務を負わず、組合も当然にその貸与を要求する権利を有するものではない。したがって、使用者が組合事務所を貸与しなかったとしても、特段の事情のない限り不当労働行為を構成するものではないと解すべきであるから、本件において右の特段の事情が認められるかどうかを検討する。
前認定によれば、豊四季事業所の組合事務所の設置場所及び面積について原告と補助参加人の主張が対立したため、この点につき合意が成立するまでの間暫定的にC部分を組合事務所として使用することになり、原告が必要な工事を完了して組合事務所貸与協定書に調印するまでになっていたところ、補助参加人が、右協定書にいまだ労使間に合意のないB部分を本事務所の設置場所とすること等を内容とする覚書を添付して原告に調印を求めたことから、原告は右貸与協定への調印を拒否したものである。この協定書への調印については、原告としては合意のない覚書が添付されていた以上、調印することは容易に受諾し難いところであったと考えられるから、右調印を拒否したことをもって原告を非難することはできない。この点につき本件命令は、右覚書中に示された組合事務所の設置場所は原告が当初提案していた場所であると認めて、原告が従前の話合いを反故にするような態度に出たのは補助参加人が統一ストライキを行ったことが契機となっているとしているが、覚書中の組合事務所の設置場所は原告の当初提案と異なっていたことは右のとおりであり、前認定のとおり原告が調印を拒否した直前に統一ストライキが行われているとはいえ、右拒否にはそれなりの理由があるのであって、ストライキが原因となっていると認めるに足りる証拠はないから、本件命令のいうところには賛同し難い。
さらに、前認定によれば、補助参加人が同五一年二月末ころ右覚書を撤回して原告に対しC部分の貸与を求めたのに対し、原告はこれを拒絶しているので、これが不当労働行為を構成しないか問題となるが、右覚書の撤回は協定書の調印を拒否してから約七か月後であり、前認定のとおり原告は既にC部分を製品、部品の保管場所として使用していたものであるし、あらためてA部分に一〇平方メートルの面積の組合事務所を設置することを提案するなど一応の努力をしていたことを考慮すると、この時点でC部分の貸与を拒否したからといって、不当労働行為として論難することはできない。
また、前認定によれば、同五二年七月の団体交渉においては、補助参加人が食堂の使用を条件として原告の提案する組合事務所案を了承する旨申し出たが、原告が食堂使用に難色を示したため、協定不成立に終わっているので、原告のこの時点における使用拒否についても検討しなければならない。しかし、食堂使用については後記のとおり問題があったのであるから、原告の右行為も不当視することはできない。
その他原告が補助参加人に組合事務所を貸与しなかったことが、労働組合に対する支配介入(労働組合法七条三号)に該当すると認めるに足りる特段の事情は認めることができず、また、前認定の団体交渉の経過によれば、原告の組合事務所に関する対応が正当な理由のない団体交渉の拒否(同条二号)に該当するということもできない。
したがって、本件命令中、組合事務所の不貸与について原告の不当労働行為を認め、原告に対しC部分の貸与を命じた部分は、違法といわざるを得ないから、取り消されるべきである。
4 組合集会等のための食堂使用について
(一) 事実関係
当事者間に争いのない事実と<証拠>を総合すれば、次の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。
(1) 原告は、補助参加人の結成通知を受けて以来、会場使用許可願の提出があれば、業務に支障のない限り補助参加人に従業員食堂の使用を許可していた。昭和五一年二月二三日午後六時三〇分ころ、補助参加人が原告の許可を得て食堂の一角で春闘の学習会を行っていたところ、木村守衛が近づいてきて守衛業務として右学習会に参加していた者の氏名を記録した。これを見た補助参加人執行委員長の大池良三らは、木村守衛に抗議して右記録用紙の交付を迫り、木村守衛からこれを提出させた。
補助参加人は翌二四日、右木村守衛の行動は組合活動に対する内政干渉であると抗議したところ、原告は、同月二七日、補助参加人に対し、守衛が就業時間終了後社内を巡回して残っている者の氏名及び人数を確認することは守衛の重要業務であるにもかかわらず、大池委員長らはこれを妨害し「会社の犬」等の暴言、脅迫を用いて木村守衛から氏名を記録した用紙を取り上げる等の行為をしたもので、極めて重大な業務妨害行為であるとして、記録用紙の返還を求めるとともに、補助参加人がこのような守衛業務を組合に対する内政干渉であるとの主張を今後も維持するのであれば原告は補助参加人に対し会社施設の使用を一切認めないとの警告並びに通告を行い、同日の補助参加人の食堂使用許可願を却下した。これに対し、補助参加人は、原告の会場使用許可願用紙を会場使用届と書き直して提出して原告の許可なく食堂を使用し、その後も原告が同年七月に食堂の出入口に扉をつけて施錠するまで、食堂の使用に際して会場使用届を提出するのみで原告の許可を得なかった。原告は、これに対して補助参加人の食堂使用は無許可使用であるとして食堂から組合員の退去を求め、電灯を消す等の行為で対抗した。
補助参加人は、同年三月九日、原告に対し食堂の使用等につき団体交渉を申し入れたが、原告は、同月一一日、食堂使用については右警告のとおり、木村守衛より取り上げた記録用紙の返還と陳謝があれば事前の申入れにより補助参加人に使用を許可することがあるとの回答を文書でしたが、団体交渉には応じなかった。
(2) 原告は、同月一八日、補助参加人に対し、①所定の会場使用許可願を使用目的、使用人数、使用時間を明確にして遅くとも前日までに提出すること、②全金千葉地方本部の役員以外の外部者の入場は総務部長の許可を得ること、③組合員以外の入場を拒むような排他的な使用をしないこと、④会社構内への入退場はもちろん、その他の会社の規範、規則を遵守することを補助参加人が今後誠実に守る旨の意思表示があれば、支障のない限り組合大会開催のため食堂の使用を許可することを文書で申し入れた。補助参加人は、右申入れに対し、同月二九日、①原告は補助参加人に対し正当な理由がない限り食堂を使用させることとし、補助参加人が食堂を使用する場合には従来どおり原告の会場使用許可願用紙を用い事前に届け出ること、②外部者の入場は従来どおり制限すべきでないこと、③補助参加人は食堂使用に当たり、原告が意図的に組合介入を行わない限り従来どおり非組合員に対し排他的使用はしないこと等を原告に申し入れた。これに対し原告は、同年四月五日、補助参加人の右申入れは原告の施設管理権を全く無視した要求であるから容認できず、補助参加人が右見解を今後とも維持するのであれば食堂使用は許可できないと文書で回答した。
(3) 千葉地労委は、同月一三日、労働委員会規則三七条の二の規定に基づいて原告に対し、補助参加人が組合会議又は職場大会若しくは分会大会等のため会場使用許可願を提出して食堂の使用を申し入れたときは、原告が使用する場合を除きその使用を拒否しないこと、組合事務所問題が解決するまで組合備品を食堂に保管して使用することを認めることを勧告したが、原告は同年五月一二日付け千葉地労委宛上申書で、右勧告は食堂使用について許可制を認めているものの、ほとんど無制限に近いものとしているとして、これを拒否した。
(4) 原告と補助参加人は、千葉地労委の勧告に基づき、同年七月五日から同月二七日までの間六回にわたり前記3(9)記載のとおり団体交渉を行い、食堂使用の問題を組合事務所貸与の問題とともに話し合ったが、補助参加人が食堂使用については右(3)の千葉地労委の勧告どおり実施してほしいと主張したのに対し、原告は、前記3(9)に記載したとおりの理由から組合事務所貸与の問題が先決であること、補助参加人が前記(2)の同年三月一八日付け文書記載の条件を受諾すれば食堂を貸与する意思のあることを主張したが、補助参加人は右条件に承服することができない部分があると主張し、結局双方とも主張を譲らず団体交渉は打ち切られた。
(二) 不当労働行為の成否
一般に使用者は、職場環境を適性良好に保持し、規律のある業務運営態勢を確保するため、企業施設を管理する権限を有するものであり、労働組合は当然に企業施設を利用する権利を保障されているものではないから、使用者が労働組合にその企業施設の使用を拒否したとしても、それが団結権保障の趣旨等からみて右施設管理権の濫用であると認められるような特段の事情がない限り、右使用拒否は不当労働行為にならないというべきである。本件食堂も原告の企業施設であり、右の理が妥当するから、本件において右特段の事情の存否を検討する。
前認定によれば、原告は補助参加人に対し、従来は会場使用許可願の提出があれば業務に支障のない限り食堂の使用を認めて来たのに、前記木村守衛の事件を契機として同五一年二月二七日補助参加人の食堂使用願を却下したものである。右の使用拒否は、労使間の慣行となりつつあった取扱いを変更したものであるところ、原告は、前記のとおり補助参加人による守衛業務の妨害行為があったことを拒否の理由としている。すなわち、補助参加人の大池委員長らが「会社の犬」等の暴言、脅迫を用いて木村守衛から記録用紙を取り上げたというものであるが、この事実そのものは、本件において認めるに足りる十分な証拠はない。しかしながら、証人福島の証言及び前認定の本件事件とその後の状況を総合してみると、木村守衛は少なくとも自発的に記録用紙を大池委員長に交付したものではないことを推認することができる。そして、原告が企業施設の保安管理の必要から、就業時間後の食堂使用について守衛に巡回させ、居残った者の人数及び氏名を確認したとしても、特別これを不当とする事情は、本件において認められない。そうすると、原告が木村守衛の事件を契機に、その直後補助参加人の食堂使用について従前の取扱いを変更したことには、合理的な理由がないとはいえないのであって、これをもって施設管理権の濫用とまでいうことはできない。
次に、原告は、前認定のとおり、右事件が起きて以来補助参加人に対して食堂の使用を一切許容していないが、これも特段不当労働行為を構成するものではないというべきである。なぜなら、前認定によれば、補助参加人は、右のとおり食堂の使用を一度不許可とされてからは、原告所定の使用許可願用紙を勝手に書き換えた使用届を提出するのみで原告の許可なく食堂を使用するようになり、これを原告が食堂に施錠するまで五か月近く続け、原告の施設管理権を無視しているといわれても仕方のない態度を取っていたものであり、他方、原告は、食堂使用につき一応考慮に値するルールを提案し、労使間の合意の形成に努める姿勢を取っていたものということができるのであるから、一切の使用を許可しなかったとしても、そのことが原告の施設管理権の濫用に当たるとはいえないからである。
そして、他に原告の補助参加人に対する食堂利用の拒否が施設管理権の濫用になるような特段の事情は、本件において認めることができない。
したがって、原告の補助参加人に対する食堂利用の拒否は、不当労働行為に該当しないというべきであるから、本件命令中、これを補助参加人に対する支配介入であるとして主文第4項のとおり救済命令を発した部分は、違法であり、取り消されるべきである。
5 組合加入状況の調査について
(一) 事実関係
当事者間に争いのない事実に<証拠>を総合すれば、次の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。
(1) 原告は、昭和五〇年四月二一日、豊四季事業所の従業員代表の小野瀬進との間に労働基準法三六条の規定するいわゆる三六協定を締結し、松戸労働基準監督署(以下「松戸労基署」という。)に届け出て残業を実施していた。ところが、補助参加人は、同年六月五日の団体交渉において右三六協定は無効であると主張し、同年九月一八日原告に対し、補助参加人は従業員の過半数で組織されている組合であるから、補助参加人との間で三六協定を締結するよう要求した。
(2) 松戸労基署は、補助参加人から右三六協定の適法性についての異議が出されたことから、原告に対し、同年一〇月二二日、右三六協定の締結当事者である従業員代表の選任方法に疑義があるとして是正を勧告し、さらに同年一一月七日、右従業員代表が三六協定の締結当事者としての資格要件を欠くとして残業を中止するよう指示したため、原告は、同月九日、残業を中止した。
(3) 原告は、同月四日、補助参加人が三六協定の締結当事者としての適格があるか否かを知る必要があるとして、補助参加人に対し組合員名簿の提出を求めたが、補助参加人はこれを拒否した。原告は、同月一一日団体交渉において、同月一四日及び一八日には文書で、重ねて組合員名簿の提出を求めたが、補助参加人はこれに応じなかった。
(4) 原告は、同月一八日、本社、豊四季、高松、土浦の各事業所において、所属課長を通じて就業時間中に一斉に従業員全員に「組合員名簿の提出は組合に対し再三に亘り申入れているにも拘らず、組合から組合員名簿は提出する必要はないとして拒否されております。会社と致しましては、過半数の労働者の代表者と締結すべき三六協定の締結にも支障を来たしております。この事情について松戸労働基準監督署に説明したところ、会社においてすみやかに調査し三六協定を締結されるよう指導されましたので次の通り各位に照会致します。」との文面で組合加入の有無を調査する照会票を配付し、記名のうえ即刻回答するよう求めた。補助参加人は、同日、原告に対し右照会票の配付は組合に対する不当な介入であり、即刻組合に対し謝罪するとともに、原告に提出された右照会票に対する回答書を補助参加人に引き渡すよう求める抗議文を提出した。原告と補助参加人は、同月二一日、右照会票配付の件について団体交渉を行ったが、補助参加人が照会票の配付は組合に対する支配介入であり不当労働行為に該当すると主張したのに対し、原告は、三六協定を締結する以上は組合員が従業員の過半数を超えているかどうか知る必要があり、再三にわたり補助参加人に組合員名簿の提出を求めたにもかかわらず、提出されなかったので調査する以外に方法がなかったと主張し、双方の主張が対立したままであった。
(5) 原告が右照会票に対する回答書を集計したところ、豊四季事業所では従業員の過半数以上の者が非組合員と回答していた。そこで、原告は、同年一二月四日、豊四季事業所につき非組合員である金子勝正ほか五名の従業員代表と三六協定を締結して松戸労基署に届け出、同月九日同署から右三六協定が適法である旨の連絡を受けた。また、土浦事業所においても同月四日までに従業員代表との間で三六協定を締結した。
(二) 不当労働行為の成否
前認定によれば、原告は、補助参加人から自らが従業員の過半数を組織する労働組合であるとして三六協定を締結するよう要求されていた一方、当時の三六協定の適法性に疑義があるとする松戸労基署の指示に基づき、残業を中止せざるを得なくなり、早急に新たな三六協定を締結する必要に迫られていた。そこで、原告は、補助参加人が三六協定の締結当事者としての適格性を有しているか否かを確かめようとして、補助参加人に組合員名簿の提出を求めたが、これを拒否されたため、本件照会票を配布して組合加入状況を調査したものである。本件命令は、原告が本件照会票を配付したのは、三六協定の締結に藉口して組合員の氏名を知ることを目的として行ったものであるとするが、右事実関係のもとでは、原告が本件照会票を配付したことには相当な理由があったものといわざるを得ず、原告の目的が右のようなところにあったものとは認め難い。確かに本件命令のいうように、組合員の氏名を明らかにする必要はなかったのであるから、原告としては補助参加人に対してその組織率を明らかにするよう求めれば足りたとも考えられないでもないが、ことは三六協定の締結当事者の要件を満たすか否かという問題で、しかも労基署から右協定を締結するよう指示されていたのであるから、正確を期するため氏名を明らかにしたうえでの回答を求めたとしても、そのこと自体非難に値するものということはできない。まして補助参加人は、自ら過半数を組織するとして三六協定の締結を求めたのであるから、組合員名簿の提出を拒否するのであれば、別途組織率を明らかにする方法を提案してしかるべきであった。ところが、本件において、補助参加人からこの点につき積極的に協力しようとした事実は、全証拠によっても認めることができない。そうすると、原告が本件照会票の配付という方法によったことも、他に適切な方法が検討されていなかった以上、やむを得なかったものといえよう。右によれば、原告が補助参加人に対して組織率を明らかにするよう求めた事実を認めるに足りる証拠がないからといって、本件照会票の配付の目的が組合員の氏名を知ることにあったと断ずることはできず、結局右行為が不当労働行為に当たると認められるような事情は、本件において認めることができないことに帰する。
したがって、本件命令中、右照会票の配付を組合の運営に対する支配介入に該当する不当労働行為であるとして、原告に対しこのような方法で補助参加人の運営に介入することを禁止するとともに、ポストノーティスを命じた部分は違法であって、取り消されるべきである。
6 新入社員教育における組合誹謗について
(一) 事実関係
当事者間に争いのない事実に<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。
(1) 原告は、昭和四九年末ころから堀越昌章(以下「堀越」という。)に原告の総務関係業務について相談するようになり、同五〇年四月一日に同人と非常勤の顧問契約を締結した。堀越は、右顧問契約に基づき同人の自宅や事務所において原告からの相談を受けたり、原告の従業員教育の実施の際に講師として講演を行う等していたが、原告の社屋内に同人のための顧問室といったものはなく、同人が社内に常駐したり、顧問業務のため定期的に会社を訪れるということはなかった。
(2) 堀越は、同年一〇月二九日に千葉県夷隅郡御宿町の原告保養所で実施された高校卒業新入社員合宿教育の講師として、原告から依頼された「不安定成長経済と企業」というテーについて講義を行った。堀越は、右講義の際、出席者から労働組合について質問を受けてこれに答える形で、労働組合について述べたが、その中で、全金は会社が組合員名簿の提出を要求しても拒否するという非常に卑怯な方法をとっており、補助参加人はまさしくこれに該当する等と補助参加人に批判的な見解を述べた。原告は、同年一一月七日、右講義の講義録を管理職に対する参考資料として作成、配付したが、右労働組合に関する部分が右講義録のかなりの部分を占めていた。
(二) 不当労働行為の成否
前認定によれば、堀越は会社に常駐しない原告の非常勤の顧問にすぎない者であり、同人のこのような地位に照らすと、原告が堀越に前記講義において組合問題に言及するよう依頼するなど、予め同人の労働組合に言及した部分の講義内容を予測できたという事情を認めるに足りる証拠がない本件においては、同人が前記講義中で補助参加人を批判する言動をしたとしても、その責めを原告に負わせることはできず、それが原告の組合に対する支配介入(労働組合法七条三号)に該当するということはできない。右講義の講義録が後日管理職の参考資料として作成、配付され、労働組合に言及した部分が同講義録のかなりの部分を占めていたことも、右判断を左右するものではない。したがって、本件命令がこれを不当労働行為として、原告に対しこの点につきポストノーティスを命じた部分は違法であるから、取り消されるべきである。
7 一時金の念書及び受領書の配布について
(一) 事実関係
当事者間に争いのない事実に<証拠>を総合すれば次の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。
(昭和五〇年年末一時金に関する念書の配付について)
(1) 補助参加人は、原告に対し、昭和五〇年一一月五日、平均3.5か月分の年末一時金の要求書を提出し、この件につき同月一二日、一四日、一八日及び二〇日を指定日としてそれぞれ団体交渉を申し入れた。これに対し原告は、現在検討中であるから遅くとも同月二〇日までには回答すると通知するとともに、組合規約及び組合員名簿の提出を求めて団体交渉を開催せず、同月二〇日、補助参加人に対し文書で年末一時金を同書記載の算定基準に基づいて支給する旨の回答を行い、あわせて同月二九日までに妥結しない場合には同年一二月一二日に年末一時金を支給できず、妥結後一四日以内に支給となると申し添えた。
(2) 原告と補助参加人は、同年一一月二一日、二五日、二八日、二九日及び同年一二月三日に年末一時金について団体交渉を行い、金額及びその算定方式について双方の主張が対立したほか、原告は秋闘要求及び三六協定締結問題との一括解決を主張し、補助参加人は別個に切り離して解決すべきであると主張して合意に至らなかった。また、原告は、同年一一月二一日の団体交渉において、補助参加人に対し組合規約及び組合員名簿の提出を要求したが、補助参加人は、組合内部の問題であって原告に提出する必要はないとして右要求を拒否した。
(3) 補助参加人は、同年一二月五日、年末一時金について原告の回答額を受け入れる旨通告したが、原告が右同様三六協定締結との一括解決を主張したことから、妥結に至らなかった。
(4) 原告は、同月初旬に一〇〇名以上の従業員有志から、慣行支給日である同月一二日に年末一時金の支給をしてほしいとの要望が出されたため、非組合員に年末一時金を支給する必要があるとして、同月九日、全従業員に原告提示の年末一時金の金額に異議がない旨の記載のある念書を配付し、同月一二日、右念書に署名した従業員に原告の前記(1)の回答額どおり年末一時金を支給した。
(5) その後原告は、同月一七日、「社員の皆さんへ」と題する文書を出し、その中で、年末一時金の額については合意に達しているが、補助参加人が三六協定の締結を了解していないこと、三六協定の締結なくしては年末一時金について妥結調印することはできない旨を述べた。原告と補助参加人は、同月一八日、三六協定を締結することなく、年末一時金について妥結調印し、原告は右念書に署名しなかった従業員にも年末一時金を支給した。
(昭和五一年春の賃上げに関する受領書の配付について)
(1) 補助参加人は、同五一年三月中旬、原告に対し同年春の賃上げ要求書を提出し、同月一九日及び二五日を指定日として団体交渉を申し入れた。これに対し原告は、補助参加人に対し、同月一九日は会社業務の都合で、同月二五日は補助参加人の要求事項について検討中のため団体交渉を開催できないと回答し、同月二九日、右要求事項について同年四月二〇日までに回答すると通知した。原告は、同月一三日、春の賃上げについて回答し、賃上げは妥結月から実施する旨述べた。原告と補助参加人は、同月一六日及び同月二一日、この件につき団体交渉を行ったが、妥結に至らなかった。
(2) 原告は、一般従業員から原告の給与支給日である同月二五日に賃上げ後の賃金支給の要望があるとして、従業員に原告の支給額に同意する旨の記載のある受領書を配付し、これに署名した者に右原告回答額どおりの賃金を支給することとし、同月二五日ころ、受領書に署名押印した従業員に右賃金を支給した。その後、原告と補助参加人は、同月三〇日、春の賃上げにつき原告の回答額で妥結した。
(二) 不当労働行為の成否
(昭和五〇年年末一時金に関する念書の配付について)
前認定によれば、補助参加人は同五〇年一二月五日、年末一時金について原告の回答額を受け入れる旨回答したが、原告は、補助参加人との三六協定の締結を条件として妥結調印を拒否し、非組合員に年末一時金を支給する必要があるとして右念書の配付行為に及んだものである。しかしながら、原告は、前記5(一)で認定したとおり、前記照会票に対する回答結果をふまえて同月四日に豊四季事業所において非組合員の過半数を代表する者との間で三六協定を締結し、同月九日には松戸労基署から右三六協定が有効である旨の連絡を受け、また、土浦事業所においても同月四日までには従業員代表と三六協定を締結しており、さらに、同月一八日には補助参加人との間で三六協定を締結することなく年末一時金について妥結調印しているところからみると、原告が同月五日の時点で補助参加人との三六協定締結を年末一時金支給の条件としたことに合理的理由を見出すことはできず、これに執着して、妥結を拒否したのはなぜか理解に苦しむところである。このような事情に照らすと、原告が同月五日に補助参加人との間で年末一時金について妥結せず、非組合員のみに年末一時金を支給するため右念書を配付した行為は、補助参加人の弱体化を図るものであって、補助参加人の運営に対する支配介入(労働組合員法七条三号)に該当するものというべきである。したがって、本件命令が、右念書の配付につき不当労働行為の成立を認め、原告にポストノーティスを命じたのは正当である。
(昭和五一年春の賃上げに関する受領書の配付について)
前認定によれば、原告と補助参加人は同五一年春の賃上げについて給与支給日である同年四月二五日までに妥結に至っていなかったところ、原告は、右給与支給日に非組合員に対し原告の回答額に基づく賃上げ後の賃金を支給する必要があるとして、右受領書の配付に及んだものである。このように組合との間で妥結していない段階で支給日を迎えたため、原告が組合員に対する右回答額による賃金の支給を留保し、非組合員にのみこれを支給しようと考えたのは当然であり、その必要があったものというべきところ、前認定のとおり補助参加人が原告の組合員名簿の提出要求に応じていなかったため、組合員と非組合員とを区別することができなかったのであるから、このような場合に原告が非組合員にのみ支給する方法として右受領書の配付という方法によったとしても、他に適切な方法がすぐには考えにくい以上、やむを得なかったものと認められ、これが直ちに不当労働行為に当たるということはできない。そして、本件において他に右受領書の配付が不当労働行為に該当すると認めるべき事情は存在しない(本件命令は、三六協定の締結資格に関して組合員名簿の提出をめぐる紛争が生じていた時期であったことを問題とするが、三六協定をめぐる紛争がこの時期まで継続していたと認めるに足りる証拠はない。)。したがって、本件命令中、同五一年春の賃上げ交渉中、全従業員に右受領書を配付した行為を不当労働行為であるとして、この点につき原告にポストノーティスを命じた部分は違法であるから、取り消されるべきである。
8 組合脱退工作について
(一) 事実関係
<証拠>によれば、原告の取締役である川合武彦(以下「川合取締役」という。)は、昭和五一年三月初旬ころ、原告の従業員であった桜井信雄(以下「桜井」という。)から同人の結婚式の仲人を頼まれてこれを引き受けたこと、川合取締役は、同年四月二六日に予定されていた桜井の結婚式の直前である同月一九日に同人と組合活動について話した際、同人が組合活動を続けるならば仲人を辞めさせてもらいたい旨述べたこと、これに対し桜井から、組合を抜けるから仲人をお願いしたい旨を述べて川合取締役に仲人を辞めないよう頼んだところ、川合取締役が、組合を脱退すると言っても言葉だけでは信用できないから退職届を書いてほしいと言ったので、桜井はその場で退職届を書いて川合取締役に提出し、翌日補助参加人に組合脱退届を提出したこと、結婚式終了後、桜井は再び補助参加人に加入したことが認められ、右認定に反する証拠はない。
(二) 不当労働行為の成否
右認定によれば、補助参加人所属組合員であった桜井は、原告の取締役である川合から結婚式直前に、組合活動を続けるなら引き受けていた仲人を断ると言われたことを契機として、組合を脱退したものである。ところで、川合取締役は原告のいわゆる利益代表者の立場にあるものであるが、利益代表者の行為であっても、それが私生活関係において行われた個人的な行為である場合には、不当労働行為は成立しないものと解すべきである。そして、結婚式の仲人を引き受けるか否かは、純然たる私生活関係上の問題である。そうすると、川合取締役の仲人辞退が原告の指示に基づくなど、原告の組合脱退工作の一環として行われたという事情を認めるに足りる証拠がない本件においては、川合取締役の右言動は同人の個人的行為であるといわざるを得ないから、原告の補助参加人に対する不当労働行為とはならないというべきである。したがって、本件命令中これを原告の組合運営に対する支配介入であるとして不当労働行為の成立を認め、この点につきポストノーティスを命じた部分は違法であるから、取り消されるべきである。
六結論
以上によれば、原告の本訴請求のうち、本件命令主文第2ないし第4項、第5項中(2)、(3)、(5)につきポストノーティスを命じた部分、第5項(4)中昭和五一年春の賃上げ交渉中に全従業員に受領書を配付し、賃金を受領する者に署名押印のうえ提出させたことにつきポストノーティスを命じた部分並びにこれらに関する原告の再審査申立てを棄却した部分の取消しを求める部分は理由があるので認容し、その余の部分は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条本文、九四条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官相良朋紀 裁判官長谷川誠 裁判官阿部正幸)
別紙命令書
再審査申立人
オリエンタルモーター株式会社
代表取締役 倉石得一
再審査被申立人
総評全国金属労働組合千葉地方本部オリエンタル支部
執行委員長 大池良三
主文
Ⅰ 初審命令を次のとおり変更する。
1 再審査申立人会社は、再審査被申立人組合の就業時間中の社外組合活動の件を交渉事項とする団体交渉の申入れに対し、誠意をもって応じなければならない。
2 再審査申立人会社は、再審査被申立人組合に対し、豊四季事業所における組合事務所として、同事業所第二事務棟地下二階の一部(別紙図面の斜線表示の部分)を貸与しなければならない。
上記貸与の条件は、再審査被申立人組合の記名押印に係る「組合事務所貸与協定書」によるものとする。
3 再審査申立人会社は、再審査申立人組合の組合員に対して、組合加入の有無を照会するなどして再審査被申立人組合の運営に介入してはならない。
4 再審査申立人会社は、再審査被申立人組合が支部大会及び分会大会開催のため、会場使用許可願を提出して、豊四季事業所の食堂の使用を申し入れたときは、再審査申立人会社が自ら使用する等特段の事情のある場合を除き、その使用を拒否してはならない。
再審査被申立人組合の支部大会及び分会大会以外の会議又は集会のためにする同食堂の使用許可の範囲について、改めて再審査被申立人組合から団体交渉の申入れのあったときは、再審査申立人会社は、誠意をもってそれに応じなければならない。
5 再審査申立人会社は、本命令受領後直ちに、下記文書を縦1.5メートル横一メートルの白色木板に墨書し、豊四季事業所の掲示板等従業員の見やすい場所に七日間これを掲示しなければならない。
記
昭和 年 月 日
総評全国金属労働組合千葉地方本部
オリエンタル支部
執行委員長大池良三殿
オリエンタルモーター株式会社
代表取締役倉石得一
当社は、
(1) 貴組合が申し入れた昭和五一年八月一日付け人事異動に関する団体交渉を拒否したこと。
(2) 全従業員に対し照会票を配布して貴組合の組合員であるかどうかの調査をしたこと。
(3) 新入社員教育において貴組合を誹謗したこと。
(4) 貴組合と昭和五〇年年末一時金及び昭和五一年春の賃上げ交渉中、全従業員に念書等を配布し、一時金等を受領する者に対してそれに署名押印して提出させたこと。
(5) 貴組合の組合員に対し脱退を強要したこと。
以上の事項が中央労働委員会によりいずれも労働組合法第七条に該当する不当労働行為であると認定されました。よって、このことをお知らせするとともに、今後はかかる行為を繰り返さないよういたします。
6 その余の再審査被申立人組合の救済申立てを棄却する。
Ⅱ その余の本件再審査申立てを棄却する。
理由<省略>
(中央労働委員会会長石川吉右衛門)
別紙命令書
申立人 総評全国金属労働組合千葉地方本部オリエンタル支部
執行委員長 大池良三
被申立人 オリエンタルモーター株式会社
代表取締役 倉石得一
主文
1、被申立人会社は、就業時間中の組合活動の範囲の件及び人事異動に関する事前協議約款又は同意約款の締結の件を交渉事項とする申立人組合の団体交渉申入れに対し、誠意をもって応じなければならない。
2、被申立人会社は、豊四季事業所第二事務棟地下二階の一部(別紙図面の斜線部分)を組合事務所として速やかに申立人組合に貸与しなければならない。貸与の条件は、昭和五〇年六月下旬に申立人組合が記名調印して被申立人会社に渡した組合事務所貸与協定書によるものとする。
3、被申立人会社は、申立人組合の組合員に対し、申立人組合加入状況の調査をして、申立人組合の運営に介入してはならない。
4、被申立人会社は、申立人組合が支部大会及び分会大会開催のため、会場使用許可願を提出して豊四季事業所の食堂の使用を申し入れた時は、被申立人会社が使用する等特段の事情がある場合を除いて、その使用を拒否してはならない。
支部大会及び分会大会以外の申立人組合の会議又は集会のために豊四季事業所の食堂の使用を許可する範囲について申立人組合から団体交渉の申入れがあった場合には、被申立人会社は、誠意をもって応じなければならない。
5、被申立人会社は、本命令書の交付を受けた後、直ちに下記の陳謝文を縦1.5メートル横一メートルの白い木板いっぱいに楷書でわかりやすく墨書して、被申立人会社豊四季事業所の正門わきの従業員の見やすい場所に二週間掲示しなければならない。
陳謝文
当会社は、貴組合に対し、
1 従業員に照会票を配布して、貴組合の組合員か否かを調査したこと。
2 組合備品を撤去したこと。
3 貴組合の分会大会等の各種集会を妨害したこと。
4 貴組合の組合規約又は組合員名簿が提出されないことを理由として、団体交渉を拒否したこと。
5 組合旗を撤去したこと。
6 総評全国金属労働組合千葉地方本部統一交渉団の入構を拒否したこと。
7 新入社員教育において、貴組合を誹謗したこと。
8 貴組合と昭和五〇年年末一時金、昭和五一年賃上げ及び同年夏季一時金の交渉中に、従業員に受領書を配布し、署名押印を求めたこと。
9 貴組合の組合員に対し、脱退を強要したこと。
が労働組合法第七条第二号又は第三号に該当する不当労働行為であると千葉県地方労働委員会において認定されました。当会社はこのような不当労働行為を行ったことについて、貴組合及び組合員に対し、深く陳謝します。
昭和 年 月 日
オリエンタルモーター株式会社
代表取締役倉石得一
総評全国金属労働組合千葉地方本部
オリエンタル支部
執行委員長大池良三殿
(注、年月日は、陳謝文の掲示を始めた日を記入すること。)
6、申立人組合のその余の申立は棄却する。
理由<省略>
別紙図面<省略>